
2026年2月のアメリカ合衆国によるイラン・イスラム共和国への攻撃を発端として中東情勢が緊迫化するなか、イエメンの反政府組織ホーシー派によるサウジアラビアへの攻撃が拡大している。10月10日には首都リヤドのキング・ハーリド国際空港が攻撃を受け、少なくとも12人が死亡、300人以上が負傷した。以降も攻撃は続き、民間航空施設や石油関連インフラにも被害が及び、民間人を含む多数の死傷者が報告されている。サウジアラビア王国側も国際的に承認を受けたイエメン政府の支援をはじめ大規模な報復作戦を実行しており、両者の攻撃の応酬が続いている。
空域封鎖による航空便の運休が相次ぐなか、12月18日・19日に予定されているABB FIAフォーミュラE世界選手権2026/27シーズンの開幕戦であるジェッダe-Prixについても、開催地や渡航の安全性、大会運営への影響が懸念される。開催可否については10月中旬をめどに判断が行われるとみられていたが、その後サウジアラビア国内への攻撃が相次ぎ、判断を取り巻く状況は一段と厳しさを増している。
サウジへの攻撃激化 空港や民間施設に被害
10月上旬、サウジアラビアでは首都リヤドをはじめ複数の地域で、ミサイルや無人機による攻撃が相次いだ。
10月8日、ホーシー派はリヤドのキング・ハーリド国際空港に弾道ミサイルを発射したと表明。サウジアラビア民間航空総局によると、同日に空港施設と国営航空会社SAUDIAの航空機を標的とした攻撃が発生。民間人3人が死亡し、複数の負傷者が出た。空港の運航は一時的に影響を受けたものの、当局は安全確認後に運航を再開したと発表した。 10月10日には同空港で再び攻撃が発生。現地当局の発表では、少なくとも12人が死亡し300人以上が負傷した。空港の出発ターミナル付近で爆発が発生し、施設の一部が損傷。空港は閉鎖され、航空便の運航が停止された。同空港は翌11日にも攻撃を受け、1人が死亡、11人が負傷した。
サウジアラビアが主導するイエメン正統政府支援連合軍は、空港付近に飛来した巡航ミサイルを迎撃したほか、東部州では無人機を撃墜し、南西部のハミース・ムシャイトに向けて発射された弾道ミサイルも迎撃したと発表した。連合軍によると、空港への攻撃による死者は17人、負傷者は333人に達したという。
12日にもリヤドに向けて弾道ミサイルが発射されたが、連合軍はこれを迎撃したと発表した。これに対しホーシー派は「イスラム教の聖地であるメッカとメディナの空港および領空を除き、サウジアラビアのいかなる空港も安全ではない」と主張し、同国への渡航を控えるよう警告。東部州ダンマームのキング・ファハド国際空港や、石油大手サウジアラムコの関連施設も攻撃したと表明した。現地当局は、ダンマームの空港で被害状況の確認と安全点検を進めているとしている。
13日には、サウジアラビア国営企業の石油大手サウジアラムコ本社が攻撃を受けた。サウジアラビアのエネルギー省は死傷者は確認されていないと発表した一方で、ロイター通信は、火災が建物の複数階に広がり、相当の損傷が生じたと報じた。
ホーシー派は14日、空港や石油関連施設への攻撃を継続することを表明。これらの施設を「正当な標的」と位置付け、攻撃はサウジアラビアによるイエメン国内での軍事作戦に対する報復だと主張した。民間人や施設の従業員、国際海運会社に対しても、サウジアラビア国内の空港や石油関連施設から退避するよう呼びかけた。
サウジアラビアのエネルギー相アブドルアジズ・ビン・サルマン氏は10月12日、リヤドで開かれた国際エネルギー会議で空港への攻撃が同国の対応能力を試していると述べ、「われわれの対応も同様に深刻なものでなければならない」との趣旨を表明した。
ホーシー派はまた、紅海の海運にも影響を及ぼしている。サウジアラビアが支援する国際的に承認されたイエメン政府の軍部は反撃を実行し、紅海とアデン湾を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡周辺を奪還したと発表した。ホーシー派はこれに対抗して攻撃を強めており、双方の軍事行動が収束する見通しは立っていない。
こうした状況を受け、リヤド空港は10月17日現地時間9時まで閉鎖されており、各航空会社はサウジアラビア路線の運休や見合わせを発表。米国連邦航空局(FAA)や欧州航空安全機関(EASA)も周辺空域に関する警告を出した。
渡航の安全性に懸念 国際イベントが相次いで延期

今回の攻撃が続くなか、2026/27シーズン開幕戦が予定されるジェッダの安全性も課題となる。
ジェッダはサウジアラビア西部の紅海沿岸に位置する商業都市。イスラム教の聖地メッカへの玄関口として知られており、ジェッダのキング・アブドゥルアジーズ国際空港は、ハッジ巡礼客をはじめとする旅客輸送を担う主要な航空拠点となっている。
10月17日時点で、今回の一連の攻撃においてジェッダ市内や空港が直接攻撃を受けたことは確認されていないものの、ホーシー派は空港や石油関連施設への攻撃を続けると表明しており、英国外務省などはジェッダを含む主要都市への不要不急の渡航を控えるよう勧告し、メディナ国際空港を除くサウジアラビア国内の空港についても、不要不急の利用を避けるよう呼びかけている。
ジェッダは首都リヤドから約850km離れており、イエメンとの国境とは直接接してはいないものの、紅海沿岸の主要都市であるため、海運に関する脅威もある。また、南西部に位置するジザンやアブハーの空港も攻撃を受けており、サウジアラビア国内の安全保障上の問題は特定の都市に限られていない。
サウジアラビアでは国際イベントの延期や日程変更が相次いでいる。10月15日には、リヤドで10月24日に予定されていた欧州連合(EU)と湾岸協力会議(GCC)の首脳会議が延期された。翌16日には、ジェッダで開催予定だったFIFAe Finals 2026の延期が発表。主催者は、地域情勢と大会開催に必要な物流面への影響を踏まえた判断だとしている。また、2027年1月にサウジアラビアで開幕予定のAFCアジアカップについては、主催者側は準備を継続する一方、開催自体は「11月末までに判断する」として、2028年への延期も選択肢になると述べている。
フォーミュラEは、2026年12月18日・19日にジェッダ市街地のコーニッシュ・サーキットで2026/27シーズンの開幕戦を開催する予定だ。2日間で2レースを実施するダブルヘッダーで実施され、次世代マシンGen4によるの初レースの舞台にもなる。
ジェフ・ドッズCEOは今年6月のカレンダー発表の場において、中東情勢が悪化した場合には、2027年1月16日に予定されるメキシコシティe-Prixをシーズン開幕戦とする可能性を否定しなかった。
9月下旬には、フォーミュラE関係筋がジェッダe-Prix開催の最終判断について、10月中旬をめどに行われる可能性を明かしていたが、それ以降サウジアラビア国内で急激に情勢が悪化している。ロジティクス面を考慮されるなか、最終判断は11月中旬までに下される見通しである。
また、フォーミュラEのメディアチームはジェッダe-Prixに参加する報道関係者に対し、ビザ申請の締切りを11月15日と案内している。
最終的な開催判断は サウジ企業とのパートナーシップにも焦点

今回の情勢悪化は、フォーミュラEとサウジアラビア企業とのパートナーシップ関係にも影響を及ぼす可能性がある。
サウジアラビアの国営航空会社SAUDIAは、フォーミュラEの公式航空会社パートナーを務めている。2026年7月には提携の拡大が発表され、昨季の一部大会で「Fly Saudia Gaming Zone」を展開したほか、2026/27シーズンの開幕戦となるジェッダE-Prixでも同企画を実施する計画が示され、国際的な旅客移動を支えるとともに、シミュレーターなどを通じた観客参加型の企画にも関わっている。
サウジアラビアの政府系ファンドであるPublic Investment Fund(PIF)は、フォーミュラEのプリンシパルパートナーを務めており、サウジアラビアの国家改革構想「Saudi Vision 2030」と連動した「Electric 360」パートナーシップを通じ、フォーミュラEやExtreme E、E1などの電動モータースポーツを支援してきた。教育分野でも、フォーミュラEと共同でSTEM教育プログラム「Driving Force Presented by PIF」を展開し、電動モビリティーや持続可能性に関する学習機会を提供している。
2018年にディルイーヤで初開催されて以降、フォーミュラEとサウジアラビアの関係は深まってきた。2025/26シーズンからは開催地をジェッダに移し、来季はGen4時代の開幕を迎える予定となる。
サウジアラビアの空港や主要インフラへの攻撃が続くなか、開催地の安全性に加え、航空輸送、関連企業の関与、大会運営を支える体制をどのように確保するかが課題となる。今後は、サウジアラビア当局やフォーミュラE主催者の安全評価に加え、渡航上のリスクや大会運営への影響を踏まえた開催可否の判断が注目される。
なお、FEナビの問い合わせに対し、フォーミュラEメディア部門から開催可否および最終判断の見込みについての明確な回答は得られていない。






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