
ポルシェは2025年11月、2026/27シーズンから新たなワークスチームの発足を発表。フォーミュラE史上最速のマシンGen4が導入される来シーズンにおいて、すでにフォーミュラEに参戦するポルシェ・フォーミュラEチームにならび、2チーム目を迎える構想だ。
しかし、新シーズンの公式テスト開始まで約3か月となった現在も、チームの運営体制やドライバーなど、具体的な参戦体制について正式な発表は行われていない。現時点で公表されている情報は、昨年11月に発表された新チーム設立計画にとどまっている。
さらに今月、オンラインで行われた記者会見では、マヒンドラ・レーシングのニック・デ・フリースがポルシェの新チーム参戦について否定する発言をした。
今季途中からチームの新規参戦を懸念する声がパドックで聞かれるなか、現役ドライバーから明確に参戦を否定する発言が出たことで、その動向に注目が集まっている。

ポルシェ・フォーミュラEチームの代表を務めるフローリアン・モドリンガー氏は、FEnaviに対し「来年は6台のポルシェ 975 RSEがグリッドに並ぶ」と明言した。
現在のポルシェ・フォーミュラEチームが2台、ポルシェのカスタマーチームであるクプラ・キロが2台を走らせることに加え、さらに2台が追加されることを意味する。
モドリンガー代表は新たにワークスチームを発足させる理由について、優秀な人材を引き込み多くのストーリーを発信できることを挙げた。
「より多くのマシンを走らせることで、より多くのストーリーを伝えることができます。ドライバーだけでなくエンジニアやメカニックの優秀な人材を引き込むことができるようになるということが、決断した基本的な背景であり理由です」
しかし、その”人材”の確保がポルシェの新チーム発足における大きな課題になっているとみられる。ポルシェが人材不足を解消するために目を向けたとみられているのが、同じドイツを拠点とするABTだ。
ABTはフォーミュラEが発足した2014年から参戦を続けてきたチームで、アウディやマヒンドラからパワートレイン(PT)の供給を受けながら活動してきた。
2024/25シーズンからは、マニュファクチャラーがローラにかわり、ヤマハ発動機がPTを供給、ABTが運用を担うローラ・ヤマハ・ABTとして参戦していた。しかし、2025/26シーズンを最後にABTはローラから離脱することになった。
ポルシェにとって、フォーミュラEでの経験を持ち、かつドイツ人が多くを占めるABTのクルーを獲得できれば、新規チームを構築するのも難しくない。
しかし、ABTのクルーの多くはローラ側へ移籍し、来季以降もローラ・ヤマハに残るとされるほか、ABTが活動するドイツ国内の他カテゴリーへ移籍する人材もいるとみられている。
また、2025年にフォーミュラEから撤退したマクラーレン・フォーミュラEチームのクルーについても、その大多数が現在のフォーミュラEパドックから離れている。既存チームから人材を獲得するにも、新たに2台を走らせるチームをゼロから立ち上げるために必要な人員を確保するには限りがある。

また、ポルシェは新チームのドライバーとして、世界耐久選手権に参戦するアイハンカン・ギューヴェンを候補にしているとみられており、来季導入されるGen4のテストにも多く起用している。しかし、仮に新チームの参戦が実現しなかったとしても、ギューヴェンの将来が閉ざされるとは限らない。
2024/25シーズンからポルシェの型落ちパワートレインを使用してきたカスタマーチームのクプラ・キロは、Gen4時代に向けてポルシェとのパートナーシップを結んでいる。そのクプラ・キロでは、ダン・ティクタムの離脱が取り沙汰されている。チームのもう1名は、クプラが強力にサポートするスペイン人ドライバーのペペ・マルティ。マルティは今季中盤までにティクタムの2倍以上のポイントを獲得するなど、高いパフォーマンスを見せてきた。
一方でティクタムについては、チーム上層部との関係やパフォーマンス不足がささやかれている。仮に離脱となれば、そのシートはポルシェがサポートするギューヴェンになる可能性が非常に高い。
現時点でポルシェは、新たなファクトリーチームの参戦計画について、具体的な進捗や体制を明らかにしていない。
モドリンガー代表が「6台のポルシェがグリッドに並ぶ」と明言する一方で、DSオートモビルズのパワートレイン供給を失ったDSペンスキーも、来季以降の参戦体制が不透明な状況にある。ポルシェの新チーム発足とペンスキーの今後、それぞれを取り巻く懸念があるなか、両者が何らかの形でタッグを組む可能性も含め、今後の動向が注目される。
(文=矢野 巧)









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