
ヤマハ発動機にとって、フォーミュラE参戦2年目のシーズンが8月のロンドンE-Prixで幕を閉じた。Gen3 EVO導入初年である2024/25シーズンに英ローラと独ABTとのタッグで参戦したヤマハは、他のマニュファクチャラーに比べてGen3の開発に2年間のビハインドがあるなか、2シーズン通算で優勝1回、2位表彰台1回、67ポイントを獲得する記録を残した。2025年の2位表彰台と2026年の優勝は、いずれもフォーミュラEにおいて初参戦から最短で記録した表彰台と優勝となった。

ヤマハ発動機開発グループリーダーの梅田泰宜氏は、この2年間について「いいときも悪いときも両方経験した」と振り返る。Gen3の開発をさらに追求したかったという想いも語った。
「自分の中では『もっとやりたかったな』という気がしています。ほかのチームとのパフォーマンス面での差が大きく、追いつくのがなかなか難しかったです。自分としても大きな課題だと思っています」
「Gen3でできなかったソフトウェアやパワートレインをしっかり使い切るというところを、Gen4のレギュレーションでやりとげたいと思っています」
フォーミュラEでは4年に一度、マシンの基本規格が刷新される。2026年11月から導入されるGen4は、最大600kWの出力と常時4輪駆動(AWD)を備えるシリーズ史上最速のマシンとなる。ヤマハにとっては、Gen3で十分に追求できなかった領域を改めて開発する機会でもある。
梅田マネージャーは、出力の増加に加えて常時4輪駆動となることで、これまで以上に複雑な制御が求められるため、制御面の向上なくしてはGen4の性能を引き出せないとみる。
「車のレギュレーションが大きく変わることで、発揮されるパフォーマンスも今までとは比べられないぐらい増えることになります。Gen4は非常に複雑なシステムで、4輪駆動なうえにパワーも上がります。ですからさらに制御面を詰めていかないと、ポテンシャルを引き出せないと考えています」
ヤマハとローラは現在、サーキットで実車を使ったテストを進めており、開発したデバイスや部品の基本動作を確認するとともに、ソフトウェアを含めたシステムの信頼性を高める段階にある。
「現在は車の信頼性の確認や、基本的なデバイスやソフトウェアの性能テストといったところの確認をしています。タイヤも変わりますし、常時4輪駆動となりますから、基本的な機能の確認を実施している最中です」
スペイン・ハラマでの公式テストののちに12月上旬に実施されるホモロゲーションまでの時間で改善を狙うヤマハとローラ。ポルシェや日産といった強力なマニュファクチャラーがパフォーマンスを追求するテストに移行する中ビハインドとも見える状況だが、それでもタイムシートには期待が見えているという。
Gen4開発では、マシンの基本性能を確認する段階からパフォーマンスを追求する段階へいかに早く移行できるかが一つの焦点となる。11月のスペイン・ハラマでの公式テストの後となる12月上旬に実施されるホモロゲーションまでの時間で改善を狙うヤマハとローラ。
ポルシェや日産など一部のマニュファクチャラーがすでにパフォーマンスを深く追求する段階に進んでいる状況ではあるが、梅田氏はそれでもタイムシートに手ごたえを感じていると明かす。
「まだパフォーマンスを深く突き詰める段階には進んでいませんが、その中でもかなりいいラップタイムが出たりするので、私たちの開発の方向性が正しい方向に向かっているなと感じています」
「12月のホモロゲーションまでを目標に改善を進めていきたいと思っています。大きな設計変更というのは今からはなかなか難しいですが、車へ搭載する際の最適化などはまだやれるチャンスが多くあります。テストを通してしっかり課題を出して、それをベースに最終的な仕様をフィックスしたいと思っています」
Gen3 EVOでの2年間で得たデータの多くがGen4開発に引き継がれると話す梅田マネージャー。一方で、チームを取り巻く環境は大きく変化した。2年間にわたってヤマハとともに戦ってきたルーカス・ディ・グラッシは引退を決断し、ゼイン・マロニーも日産への移籍が決定。さらに、ローラ・ヤマハ・ABTの副代表としてチームを支えてきたフレッド・エスピノス氏も離脱するなど、Gen4時代の到来を前に、ドライバー、チーム運営の両面で体制が変わることになった。
そのなかでも、ヤマハ発動機はパワートレイン開発を着実に進めている。ヤマハ発動機は、ローラとともに新たな挑戦に挑んでいる。
(文/写真・インタビュー=矢野 巧)







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