
今年5月のベルリンE-Prixにおいて、病と闘うひとりのドライバーに向けフォーミュラEのパドックから支援の輪が広がった。その対象となったのは、イギリス人ドライバーのウィル・マッキンタイア。2025年9月に肺がんと脳腫瘍と診断され、現在はモータースポーツから離れ英国の病院で闘病生活を送っている。

マッキンタイアを支援する取り組みとして、「#TEAMWILL37」の活動が展開されている。マッキンタイアのレース仲間やモータースポーツ関係者が、ステッカーなどを通じて彼への連帯を示している。
フォーミュラEでもその動きは広がり、ベルリンE-Prixではテイラー・バーナード、オリバー・ローランド、ノーマン・ナトー、ダン・ティクタム、ペペ・マルティ、マキシミリアン・ギュンターの6名が、マシンに「#TEAMWILL37」のステッカーを掲げてレースに臨んだ。

この取り組みの中心にいたのは、イギリス出身の22歳のバーナードだった。
バーナードとマッキンタイアには、長年にわたる深い関係がある。2017年からのカート時代に出会い、英国のシリーズではチームメイトとして競い合った。
その後、バーナードは2021年にフォーミュラデビューをはたし、順調にカテゴリーをステップアップすると、2024年にフォーミュラEのレギュラーシートをつかんだ。一方のマッキンタイアは、2022年からフォーミュラシリーズへの参戦を開始。2025年は英国を拠点とするGB3選手権に参戦していた。
「私は9歳か10歳のころからウィル(・マッキンタイア)と一緒にレースをしてきました。イギリスのカート時代はチームメイトでしたし、もちろん長年の親友です。連帯を示し、私から少しでも彼に関する発信のプラットフォームを提供することができたのは、非常に素晴らしいことでした」
バーナードにとってフォーミュラEで「#TEAMWILL37」を掲げることは、モータースポーツの世界で競い合ってきた仲間に対し寄り添うための行動だった。
「モータースポーツにおける友人であり、同僚でもある彼に対して、連帯を示したかったのです」
フォーミュラEで初めて「#TEAMWILL37」のステッカーが掲げられたのは、3月に行われたルーキーテストだった。アンドレッティ・フォーミュラEチームからテストに参加した英国人ドライバーのフレディ・スレイターが、自身の乗るマシンのヘッドレストにステッカーを掲げた。スレイターもまた、カート時代からマッキンタイアと競い合い、ともに2022年に四輪へステップアップ、そしてフォーミュラシリーズにも同時期に参戦した。

この支援の輪は、2か月後のベルリンでさらに広がることとなった。バーナードは、スレイターの行動がフォーミュラEのパドックへと波及したことを歓迎する。
「今の彼は、できる限りのサポートを必要としている状況にいます。(この連帯は)誰かが何かを証明するためではなく、思いやりの心から支援が広がっていると感じています」

ベルリンで「#TEAMWILL37」を掲げたドライバーのなかには、マッキンタイアと直接レースをした経験を持たないドライバーもいた。そのひとりがペペ・マルティだ。
「ウィルとレースをしたことはありませんが、共通の友人がたくさんいます。彼は今、癌との闘病という非常に困難な時期にあります。モータースポーツの世界で私たちにできることは、サポートを示すことです」
マルティがサポートに名乗りを上げたのも、より多くの人にマッキンタイアの存在と現在の状況を知ってもらい、それが支援につながることを願ってのものだった。
「より多くの人が彼のストーリーを知り、何らかの形で助けになれば、素晴らしいドライバーであり、ファイターである彼にとってポジティブなことになります。私たちはいつでも全力のサポートを届けたいと思っています」
マルティもまた、ドライバー同士が支え合うことの意味を知るひとりだ。
マルティのヘルメットには、2023年にスパ・フランコルシャンでのレース中に命を落とした友人のディラノ・ファン・ト・ホフへの追悼の意が込められている。マッキンタイアを支援するバーナードやスレイターの姿を見たことも、マルティがこうした活動に参加する背景のひとつとなった。
「フレディ(・スレイター)とウィルは親友です。私はウィルを深く知っているわけではありませんが、親しいドライバーたちがこうした活動をするのを見るのは良いことです。チームも巻き込んでいくことができますからね」
「私のヘルメットの後ろには、数年前にスパで亡くなったディラノ・ファン・ト・ホフへの追悼の意が常に込められています。これは私たちなりの「恩返し」の形なんです。少しでも力になれることがあるのならば、それが私たちのすべき最善のことだと思っています」
マッキンタイアへの支援や「#TEAMWILL37」の取り組みの詳細は、本人の公式ホームページで確認することができる。
(文・インタビュー=矢野 巧)






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