
ポルシェ・フォーミュラEチームは今シーズン、「Racing for Charity(チャリティのためのレース)」を展開している。2023年のル・マン24時間レースに始まったこのチャリティは、ポルシェのワークスマシンマシン”ポルシェ 99X Electric”がレースで走行した1ラップにつき400ユーロを拠出し、3つの慈善団体に分配する仕組みだ。
今回のベルリンE-Prix開催に合わせ、フォーミュラEも同プロジェクトへの参画を発表。レースを開催する各地域の慈善団体やプロジェクトを支援するために設立された基金である「ベター・フューチャー・ファンド(Better Futures Fund)」を通じて、2万5,000ユーロの追加寄付を行う。

ここまで6戦を終え中盤戦に突入した今季、ポルシェ99X Electricは、累計388ラップを走破。現在の寄付総額は15万5,200ユーロ(約2,900万円=5月2日現在)に達しており、最終戦ロンドンE-Prix終了後に最終的な拠出額が確定する。
寄付金が分配される3つの慈善団体は以下の通り。
インタープラスト・ジャーマニー(Interplast Germany e.V.)
過去2年間、モザンビークおよびタンザニアにおいて、500名以上の子供たちを執刀。火傷による拘縮で機能を失った手足の再建など、生活の質(QOL)を改善させる手術を行うなど、発展途上国における形成・再建外科手術を提供する。
キンダーヘルツェン・レッテン (Kinderherzen retten e.V.)
高度な医療環境が必要な心臓疾患の子供たちを、ドイツ最大級の規模を誇るフライブルク大学病院(Universitäts-Herzzentrum Freiburg)へ移送し手術を実施。
ポルシェの開発ドライバーを務めるガブリエラ・イールコヴァも同センターを訪問し、医療現場の窮状と支援の必要性を直接確認している。
フェリー・ポルシェ財団(Ferry Porsche Foundation)
子供や若者の教育、福祉、スポーツ支援など多岐にわたる社会貢献活動を展開。

ポルシェのドライバーであるニコ・ミュラーは、自身がレースで1周走るごとに400ユーロの価値が生まれ、その額が慈善団体に寄付されるという点について、「より意味のある、深い目的が加わった」と感じているという。
「もちろん全レースを完走し、シーズン中の全ラップを走り切るためにベストを尽くしていますが、「Racing for Charity」は、レース活動全体にさらに深い目的を与えてくれる特別なモチベーションにもなります。」
「私たちはサーキットで夢を生きるという非常に恵まれた状況にありますが、(それを通じ)子供たちが人生を楽しみ、心にある夢を持ち続けられるよう助けらることを目指しています。」
フォーミュラEのラファエラ・ゴードン=セイカー氏は、「レースとチャリティの融合は革新的であり、すべての開催地に永続的なレガシーを残すというフォーミュラEの理念と完全に一致する」と、これまで掲げてきた「目的主導型」の精神がチームとともに体現されている点を強調する。
大学教授のバイヤスドルフ博士は、自身が代表を務めるキンダーヘルツェン・レッテンの取り組みがポルシェとフォーミュラEを通し世界に発信されることで、「誰もが「これは良いアイデアだ」と思うようになる」という目標に近づくと確信しているという。
「世界では、医療の質や能力には大きな格差があります。先進国で治療可能な疾患も、ある地域では死に直結します。子供たちにそれが起こるのは耐え難いことです。だから私たちは小児心臓外科の治療を受けられない国の子供たちに治療の機会を提供するため、25年前にキンダーヘルツェン・レッテンを設立しました。たとえ「焼石に水」だとしても、少しずつでも行動すれば、最終的には大きな力になります。」
「Racing for Charityが救った子供たちもいます。この活動がその家族、子供、そして彼らが住むコミュニティ全体にどれほど大きな影響を与えるか、想像もつかないほどでしょう。ただ助けるだけでなく、彼ら自身が高度な治療を行えるよう支援することが目標です。」
「活動が世界に発信できれば、特に今日において、かつてないほど必要されている平和の象徴にもなります。」

発展途上国における人道的な形成・再建外科治療を行うインタープラスト・ジャーマニーのドデラー教授は、4年前にル・マン24時間レースから始まった「Racing for Charity」が、数多くのミッションを遂行する助けになったと話す。
「寄付により医療インフラの持続可能性を構築し、患者ケアや教育の面でインフラを整えることも非常に重要です。」
また、タンザニアでの手術例をあげ、「ひどいやけどを負い、治療を受けられなかったために右手を広げることも使うこともできない3歳の男の子がいました。インタープラストによる複雑な手術の結果、すべての指を分離させ、指と手全体を動かせるようにすることができました。」と、このプロジェクトの成果を語った。

ベルリンE-Prixにおいて、ポルシェ99X Electricは特別なリバリーで出走する。「Racing For Charity」を記念するとともにポルシェのモータースポーツ75周年を祝い、1971年のル・マン参戦車を彷彿とさせる「ピンク・ピッグ」のデザインを纏う。
今週末は土曜日に39周、日曜日に37周、計76周のレースが予定されている。ポルシェの2台がすべての周回を完走すれば、この週末だけで6万800ユーロ(約1,100万円)が新たに基金へと積み増される計算となる。
世界中の子供たちの明るい未来にむけ、ポルシェ・フォーミュラEチームは大切な母国レースへと挑む。
(文=矢野 巧・写真=Porsche Newsroom)





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