
ABB FIA フォーミュラE世界選手権のシーズン12は、イングランド・ロンドンで開催された第17戦をもって幕を閉じた。ドライバーズタイトルを争ったジャガー・TCS・レーシングのミッチ・エバンスは最終戦を3位で終え、首位から9ポイント差のランキング3位となった。
エバンスにとって第17戦は、自身初のドライバーズタイトルを懸けた最終決戦であると同時に、フォーミュラE参戦以来10年間にわたって所属してきたジャガーとの最後のレースでもあった。
幾度となくタイトルに手をかけながらも、ドライバーズチャンピオン戴冠は叶わなかったエバンス。一方で、今季はジャガーに2度目となるチームズタイトルをもたらし、長年にわたるチームとの旅路をチームズタイトルとともに締めくくった。

ロンドンE-Prixを迎えた時点で、エバンスはチャンピオンシップリーダーのジェイク・デニスからわずか2ポイント差のランキング2位につけていた。
土曜日の第16戦では、ポルシェのニコ・ミュラーに抑えられる展開が続くなか、600kWの充電を行うピットストップを消化しつつ2位争いを展開。しかし、レース中盤にフルコースイエローが導入されたことで多くのマシンに先行を許し、このレースを制しランキング首位に躍り出たパスカル・ウェーレインに21ポイント差をつけられた状態で最終戦を迎えることになった。
第17戦では、チャンピオン戴冠には最低でも優勝が必要となるエバンス。しかし、レース序盤からウェーレインとそのチームメイトであるミュラーの後方を走る展開となった。そんな中、エバンスのチームメイトであるアントニオ・フェリックス・ダ・コスタが猛追を仕掛け、ウェーレインとの激しいバトルを展開。エバンスのタイトル争いを援護した。
終盤には厳しいラインを取ったダ・コスタがウェーレインを押し出だすような形で後方を走る他車へポジションを譲り、2台ともポイント圏外まで後退。エバンスに逆転のチャンスを残すチームプレイを見せた。
しかし、4位を走っていたエバンスは前方の3台を捕らえることができず、優勝を逃したことで悲願のドライバーズタイトルの可能性も消滅。最終的にウェーレインから9ポイント差のランキング2位でシーズンを終えた。
数シーズンにわたってチャンピオン争いを繰り広げながら、毎シーズン最後の一歩だけが届かなかったエバンス。レース後のプレスカンファレンスでは、「悔しさはあるけれど、全力を出し切った」と振り返った。
ロンドンでは週末を通してポルシェ勢が強さを見せ、エバンスは2日間ともその後方に阻まれる形となった。週末を通して苦しいレースを過ごしてしまった要因については「間違ったマシンの後ろで予選を終えてしまった」ことだとあげた。
「不運にも2日とも間違ったマシンの後ろで予選を終えてしまい、レースでは僕を止めるために全力を尽くす『青と白の障害物(ポルシェ)』がずっと立ちはだかってしまいました。今日は何とか彼らを抜くことができたものの、タイムを失いすぎてしまい首位を捕まえることができませんでした」
ポルシェ勢の走りについては「少し行き過ぎた走りに見えた」としながらも、最終的にはレースの一部として受け止めていると明かした。
「僕にとっても(ポルシェは)少し行き過ぎた走りに見えたけれど、これがレースです。自分たちのできることはすべてやって、チャンスを作るよう努力はしましたし、それはできたと思っています。けれど結局のところ、両日とも予選で負けてしまった」
「でも全力を尽くしたし、諦めなかった。このチームでの僕のキャリアを違う形で締めくくりたかったですが、運命ではなかったということ。波の激しいシーズンでしたが、誇りに思えるシーズンだったと思います」

最終戦を前に「ダブルタイトル獲得」を目標に掲げていたエバンス。自身のドライバーズタイトルこそ叶わなかったものの、10年をともに過ごしたジャガーとの別れを前に、チームへ2度目のチームズチャンピオンシップをもたらした。
「いつかこの日が来ることは分かっていました。このチームは僕に本当に多くのものを与えてくれたし、永遠に感謝します。僕にモータースポーツでの最初のプロ契約をくれたのはジャガーだし、初日からプロジェクトに関わってくれたすべての人たちに恩義があります。ですから自分たちが達成してきたことをとても誇りに思っています」
「もちろんもっと(タイトルが)欲しかったし、1つ残っていたチェックボックスも…残念ながらそれは叶わないませんでした。でも誇るべきことはたくさんあります」
自身のジャガーでのキャリアを問われると、フォーミュラE史上最多優勝となる16勝を誇るエバンスは「16個はありますね」と語り、成功と苦難のキャリアを振り返った。
「素晴らしいハイライトなら16個はありますが…本当に最高の瞬間もあれば、どん底のような瞬間もあったし、そのすべてを経験しました。これだけ多くのレースと年月を一緒に過ごしてきたあとで、特別な1つだけを抜き出すのは難しいです。もちろん最初の勝利は僕たちにとって本当に重要な瞬間でしたし、1-2もそうだし、チームズタイトル獲得も。だから振り返って懐かしく思える瞬間はたくさんありますし、これからの人生でずっと大切にしていきます」
「明日目が覚めたとき、初めて『ジャガーのドライバー』ではない朝を迎えるのは妙な感じがするでしょうね。彼らの今後の幸運を祈っていますし、僕としても次の新しい冒険に向けてワクワクしています」
(文=矢野 巧)








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