
ABB FIA フォーミュラE世界選手権 第14戦 東京E-Prixの決勝レースが行われ、ダン・ティクタム(クプラ・キロ)が最終周の逆転で優勝を飾った。
レースは全36周。各ドライバーには合計8分間のアタックモード使用と、1回のピットブーストが義務付けられた。
スタート前の東京は快晴。気温、湿度ともに日中から下がり、過ごしやすいコンディションとなった。
ただし、決勝中には雨雲がサーキットの両側を通過するとの予報も出ており、レース途中で雨が降る可能性が残されていた。
これを受け、一部チームが雨を見越してタイヤ内圧を高めに設定する可能性も考えられたが、アンドレッティ、マヒンドラ、エンビジョンは通常のセットアップでスタートする方針を選択。予選で後方に沈んだ日産やローラ・ヤマハ・ABTが異なる戦略を採るかにも注目が集まった。
予選中に激しくクラッシュしたニコ・ミュラー(ポルシェ)は、決勝に向けてモノコックを交換。後方からレースに臨んだ。
スタートでは、ポールポジションのジェイク・デニス(アンドレッティ)が首位を維持。
その後方では早くも接触が相次ぎ、ミュラーが3コーナーでジャガーのマシンと接触したほか、ノーマン・ナトー(日産)がパスカル・ウェーレイン(ポルシェ)の後方に接触する場面もあった。
ゼイン・マローニ(ローラ・ヤマハ・ABT)には10秒のストップ・アンド・ゴー・ペナルティが科され、セバスチャン・ブエミ(エンビジョン)にも接触を理由とする5秒加算ペナルティが出された。
序盤はデニスがトップを守り、6周目にはテイラー・バーナード(DSペンスキー)が前のマシンをかわして3番手へ浮上した。
一方、上位集団ではバッテリー残量がほぼ同じ状態で推移。狭くオーバーテイクの難しい東京のコースということもあり、各車はエネルギーを大きく温存しながら長い隊列を形成した。
9周目の時点では、14番手以下の車両が80%近いバッテリー残量を保持。前方ではペースを抑え、後方では余裕のあるエネルギーをどこで使うかを探る展開となった。
ナトーにはターン7での接触に対して5秒のタイムペナルティが科されている。
11周目、デニスにはチームから「20分以内に雨が降る可能性がある」と無線が入った。コース脇のカメラマンエリアでも、わずかな雨粒が感じられ始める。

それでも各車はアタックモードを温存。15周を終えても、大半のドライバーがまだ使用していなかった。
雨が本格的に落ち始めたのは16周目。ここでブエミがいち早くアタックモードを起動し、一気にポジションを上げていく。
アタックモードを使い切った17周目には、デニスに次ぐ2番手まで浮上。ペナルティを抱えながらも、積極的な戦略で上位へ進出した。
19周目には、上位争いでアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(ジャガー)とウェーレインが接触。ターン7から8にかけて、ウェーレインがダ・コスタをコース外へ押し出す形となった。
同じ周にはマキシミリアン・ギュンター(DSペンスキー)、ナトー、ヨエル・エリクソン(エンビジョン)、ティクタム、ニック・キャシディ(シトロエン)、ミュラーがピットブーストを消化。
翌20周目にはエドアルド・モルタラ(マヒンドラ)、ミッチ・エバンス(ジャガー)、ウェーレインもピットへ向かった。
フェリペ・ドルゴヴィッチ(アンドレッティ)は21周目にピットブーストを実施。しかし23周目、ウェーレインがマシンをピットへ戻し、そのままリタイアとなった。
ドライバーズランキング首位で東京へ乗り込んだウェーレインがノーポイントに終わったことで、今大会でワールドチャンピオンが決定する可能性は消滅した。
この時点でピットブーストを残していたのは、ブエミ、ルーカス・ディ・グラッシ(ローラ・ヤマハ・ABT)、ダ・コスタ、ペペ・マルティ(クプラ・キロ)、オリバー・ローランド(日産)ら。
24周目にはブエミ、ダ・コスタ、ディ・グラッシがピットへ入り、ピットブーストを消化。これにより、ローランドが一時的にレースリーダーとなった。
翌25周目にローランドとマルティもピットへ向かい、全車が義務付けられたピットブーストを完了した。
この頃には半数近いドライバーがアタックモードも使用しており、順位は大きく入れ替わった。ピットブーストを早めに済ませて前へ出た車を、後からアタックモードを使う車が追い上げる展開がコースの各所で繰り広げられた。
終盤に向けて主導権を握ったのは、デニスだった。
29周目、アタックモードの残り時間が少なくなるなか、デニスはトップを走るティクタムをオーバーテイク。再びレースリーダーの座を取り戻した。
その後、ティクタムはデニスの背後に食らいついた一方、3番手のキャシディとの差は徐々に広がっていく。優勝争いはデニスとティクタムの一騎打ちとなった。
34周目を終えた時点で、追加周回はなし。後方ではアタックモードを残すドライバーもいたが、長い隊列に阻まれ、十分な効果を発揮できない状態が続いた。
残り2周、ティクタムがデニスとの差を急速に縮める。
そして迎えた最終36周目。ティクタムはデニスの背後にぴたりとつけると、ターン16でオーバーテイクを成功させた。
レースの大半をリードしてきたデニスを最終周に逆転し、そのままトップでチェッカーフラッグ。東京E-Prix史上初のナイトレースを、劇的な形で制した。
ティクタムにとっては、昨年のジャカルタE-Prix以来となる勝利。
デニスは、日本のカスタムカーブランド「LIBERTY WALK」とのコラボレーションリバリーをまとい、ポール・トゥ・ウインまであと一歩に迫ったものの、最終周に優勝を逃して2位となった。
3位にはキャシディが入り、4位にはエバンスが続いた。
エバンスはランキング首位だったウェーレインがリタイアしたことで、ドライバーズランキングのトップへ浮上。第14戦終了時点でエバンスが144ポイント、ウェーレインが141ポイントとなり、両者の順位が逆転した。
ローランドは7位でフィニッシュ。過去3回の東京E-Prixですべてトップ2に入っていたが、今回は初めて表彰台圏外でレースを終えた。
スタート前から警戒されていた雨は、決勝中にはレースを大きく左右するほど強まらなかった。
しかし、チェッカーフラッグとほぼ同時に、サーキットには再び雨が降り始めた。
第15戦の決勝レースは、翌日も同じ20時05分にスタート予定。日曜日はさらに強い雨の予報も出ており、東京のダブルヘッダーは再び不安定な天候のなかで行われる可能性がある。
ABB FIA フォーミュラE世界選手権 第14戦 東京E-Prix 決勝レースリザルト
1位 ダン・ティクタム(クプラ・キロ)
2位 ジェイク・デニス(アンドレッティ)
3位 ニック・キャシディ(シトロエン)
4位 ミッチ・エバンス(ジャガー)
5位 エドアルド・モルタラ(マヒンドラ)
6位 ジャン=エリック・ベルニュ(シトロエン)
7位 オリバー・ローランド(日産)
8位 ペペ・マルティ(クプラ・キロ)
9位 アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(ジャガー)
10位 テイラー・バーナード(DSペンスキー)
11位 ルーカス・ディ・グラッシ(ローラ・ヤマハ・ABT)
12位 ヨエル・エリクソン(エンビジョン)
13位 フェリペ・ドルゴヴィッチ(アンドレッティ)
14位 セバスチャン・ブエミ(エンビジョン)
15位 マキシミリアン・ギュンター(DSペンスキー)
16位 ノーマン・ナトー(日産)
17位 ニック・デ・フリース(マヒンドラ)
18位 ニコ・ミュラー(ポルシェ)
19位 ゼイン・マローニ(ローラ・ヤマハ・ABT)
リタイア パスカル・ウェーレイン(ポルシェ)
(文=河合優利)








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