
ABB FIA フォーミュラE世界選手権が公開したシーズン13(2026/2027)のカレンダーは、従来から大幅に拡大され、12か国14会場での開催となった。その中で新規開催となる3会場はすべて常設サーキットであり、これまでフォーミュラEがDNAとしてきた市街地レースの割合が縮小する形となっている。

全14会場のうち8会場が市街地コースであるものの、ジェッダ・コーニッシュやマイアミ・オートドローモ、メキシコシティなど、F1世界選手権の会場レイアウトの一部を使用したコースも多い。シーズン13から導入される新型マシン「Gen4」は、最高出力600kW、最高時速335km/hを超えるハイパワーな仕様であり、これを許容できるレイアウトが市街地には少ないのも事実だ。
フォーミュラEの共同創設者であるアルベルト・ロンゴ氏は、カレンダー拡大に際し市街地会場を選ぶ重要性を強調する一方で、「適切な市街地コースが見当たらなかった」とも繰り返した。米国2連戦の舞台には、継続開催となるマイアミのほか、新規の常設サーキットであるオースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)が選ばれた。同氏は「中国には三亜というコースがありましたが、米国での2大会開催に向けては不運にも市街地を見つけることができませんでした」と述べている。
また、これまでGen3時代の最終戦の舞台であったエクセル・ロンドンが開催されない点については、「Gen4マシンのパフォーマンスのために移らざるを得ませんでした」と明かす。その上で、ロンドン開催にこだわるため、伝統あるブランズハッチという常設サーキットを選択したという。
ロンゴ氏によると、開催地選択においては市街地コースを模索するものの、常に最優先されるのはフォーミュラEが重要市場とする都市で開催することであるという。
「取締役会や経営陣、チーム、メーカー、グローバルパートナーが重要だと定義した主要市場を選びますが、市街地が見つからない場合は常設サーキットに行きます」
「常に最優先されるのは、重要な市場でレースを実施することです」
Gen4マシンが走行できるレイアウトが限られる中、シーズン13においては市街地でのレースというDNAを追求するよりも、主要市場の開拓を優先した格好だ。
フォーミュラEは過去に米国でポートランドE-Prixを開催した経験がある。米最高峰のフォーミュラレースであるインディカー・シリーズも開催されるコースだが、こちらも同様に常設サーキットである。ジェフ・ドッズCEOは「現時点でポートランド開催の話し合いは進んでいません。注力しているのは、オースティンとマイアミを成功した2つの組み合わせにすること」とし、北米においては主要市場の選択をきわめて重視している様子だ。

新カレンダーを目にしたチーム関係者からは、常設サーキットにおける新たなレース展開への期待が膨らむ一方で、市街地ならではの華やかさが失われることへの寂しさや懸念の声を三亜E-Prixでの取材を通し聴くことができた。特に話題の中心となっているのは、ブランズハッチへの移行によりカレンダーから消滅するロンドンの「エクセル」だ。
アンドレッティのロジャー・グリフィス代表は、Gen4の走行を目にした際に直感的に「速さ」を感じたと話し、そのマシンのパフォーマンスに高い期待を寄せる。
「Gen4のエクセル・ロンドンでの走行が難しいのは分かっていました。ですからフォーミュラEがロンドン市内で別の場所を見つけられるか、あるいはロンドン近郊に複数あるサーキットを確保できるかを模索していたのを知っています」
「どの会場で開催されることになっても、フォーミュラEが非常にエキサイティングなものになることは間違いありません」
今季、アンドレッティ・フォーミュラEとの契約更新を発表し、Gen4時代への参戦が確定しているジェイク・デニスは、拡大したカレンダーに期待を寄せる。
「期待が持てるカレンダーだと思います。過去最大の21戦とレース数も多く、レースで勝つ機会もたくさんあります」
「Gen4マシンにはブランズハッチへの移行が必要なのでしょう。従来よりはるかに速く、大きくなりますからね。ブランズハッチかシルバーストーンかという選択においては良い決断を下してくれました」

しかしデニスは、母国の市街地コースが持つ特別な雰囲気が失われることへの寂しさもにじませた。「ブランズハッチでのレースは、ロンドン市街地とはまったく違うものになるでしょうね。エクセル・ロンドンはシーズンでも最高で、特別な素晴らしいイベントでしたから、なくなってしまうのは非常に寂しいです」
DSペンスキーのテイラー・バーナードは、「驚くほど速い」Gen4導入のなかでも、フォーミュラEのDNAを維持し続けることが最も重要だと考えている。
「より大きく、より速くなるマシンに合わせて市街地から移行することは当然合理的ですから、常設サーキットの開催は今後さらに進むのだと思います。僕自身はその移行を受け入れています」
「それでも、フォーミュラEのDNAとして、市街地コースを維持することは依然として非常に重要だと思っています。インディカーが歴史的なオーバルコースを残しつつ、ロードコースも走るように、フォーミュラEも市街地コースから始まった選手権ですから、その市街地の要素を残しておく必要があると感じています」
同じくDSペンスキーのマキシミリアン・ギュンターは、市街地コースと常設サーキットの「健全な両立」が維持されることをフォーミュラEに望むと話す。
「私は市街地サーキットが大好きですが、より高速なトラックを走るのも大好きです。この2つの「健全な組み合わせ」を維持できるのであれば、(市街地と常設サーキットの)両方の組み合わさるカレンダーは素晴らしいと思います」
「フォーミュラEの個性は市街地サーキットから来ているものであり、私たちは皆、市街地サーキットでのレースを愛しています。将来もこのレースを首都や都市へと持ち込み続けることができればいいですね」
シーズン13のカレンダーを非常にクールと評価するギュンター。カレンダーに入っていない都市で走りたいコースを問うと、F1世界選手権のシンガポールを挙げた。
ローラ・ヤマハ・ABT・フォーミュラEチームのスポーティングディレクターを務め、今月開催された三亜E-Prixでは代表を務めたフレッド・エスピノスは、Gen4マシンの会場選択には非常に楽観的な姿勢を見せ、市街地での開催可能性に触れた。
「Gen4は多様性を持たせることができるマシンです。モナコでF1も走らせることができるのですから、フォーミュラEだってどこでも走らせることができるはずですよ」

新世代マシンの高性能化に伴い、パーマネントトラックへの移行は避けられない流れでもある。電動自動車の最高峰であるフォーミュラEにとって、マシンの最適化はもちろん重要であるが、独自のDNAである市街地におけるクリーンなレース運営という魅力を残しつつ、世界中の主要市場での存在感をいかに高めていくのか。フォーミュラEの13年目は非常に重要なシーズンとなるだろう。
(文=矢野 巧)






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