
今年12月に開幕するABB FIA フォーミュラE世界選手権のシーズン13(2026/2027)から、ドイツの大手自動車メーカーであるオペルが「オペル・GSE・フォーミュラEチーム」として参戦を開始する。
1862年創業で、現在はステランティスグループの一員であるオペルは、ステランティスパワートレイン(PT)で参戦するものの、「メイド・イン・ジャーマニー」が象徴する精密さと品質を掲げ、ファクトリーチームとして参画することとなる。
チーム代表を務めるのは、オペル・モータースポートのダイレクターとして15年のキャリアを誇るイェルク・シュロット氏。今季すでに多くのレースのパドックに姿を見せる同氏に、オペル・GSE・フォーミュラEチームの現在地と未来の展望を聞いた。
純ワークス「ドイツブランド」としての意義

Q. フォーミュラEに根付くステランティスグループの一員として、どのような立ち位置のメーカーとして参戦するのでしょうか?
オペルはステランティスグループ内で「唯一のドイツ系ブランド」です。
125年以上の歴史を持つ自動車製造の伝統があり、これがグループ内における私たちの特別なアイデンティティとなっています。
私たちは「ドイツでの製造」「ドイツのエンジニアリング」「ドイツの精密さ」「ドイツの品質」といった部分を前面に出していきます。これこそが、ステランティスグループ内におけるドイツブランドとしての役割なのです。
Q. 世界におけるEVシフトをけん引してきたドイツのワークスチームとしてフォーミュラEに参戦する意義を教えてください
オペルの参戦は、私たちにとって非常に重要なステップとなります。
ステランティスのフォーミュラEにおける歴史では、例えば、DSペンスキーやマセラティMSGなどのように、常にチームとパートナー提携する形をとっていました。
今回、純粋な「ワークスチーム」としてチームを運営することは極めて重要です。パートナーがいないため、レース戦略、ドライバーの選定、チーム体制の構築に至るまで、すべての決断を自分たち自身で下すことができます。これこそがアドバンテージになると信じていますし、今はこの強みを最大限に活かす段階に来ています。
Q. これまでの電動レースの取り組みで、どのような経済的・技術的波及効果が得られていますか?
オペルの電動ラリーカーでは、バッテリー、インバーター、電動モーターといった市販車の基幹部品をそのまま使用しています。
モータースポーツは、市販車の開発テストではカバーできない極限の領域まで技術を追い込みます。たとえば、EVの運用において、熱管理やエネルギー管理は常に最重要課題です。
そのため、私たちは膨大なデータや技術的ソリューションを市販車の開発部門に提供しています。これが次の世代の市販車にそのままダイレクトにコピーされるわけではありませんが、次世代の量産EVに活かされるアイデアやソリューションが数多く生まれています。
Q. 15年間モータースポーツ・ダイレクターを務めてきた視点を通じ、フォーミュラEはどのような選手権と映っていますか?
フォーミュラEを間近で追っていたわけではなく、今まさに深く潜り込んでいる最中なので答えるのが難しいですが…。基本的には、Gen4マシンの導入は非常に重要なフェーズだと感じています。
最高出力が600kWに達するとか、最高速度が時速330kmを超えるとか、0-100km/h加速が1.8秒を切るといったパワーだけの話ではありません。
技術的な観点から特に興味深いのは、レース中に必要なエネルギーの少なくとも40%以上が、走行中の回生ブレーキによって回収・再充填されるという点です。これは技術開発において、最大のハイライトとなります。
ですから、フォーミュラEに参戦するのは完全に正しいタイミングだと信じています。このレースシリーズは国際的なモータースポーツカテゴリーにおいて極めて重要な役割を果たしており、電動車によるレースは、今後のモータースポーツ界において間違いなく中心的な存在であり続けるはずです。
「高い信頼性に手ごたえ」佳境を迎えるGen4開発

Q. Gen4の開発状況を教えてください。
現在、開発は佳境に入っていると言えます。実際のトラックで数多くのテストを実施しているところです。
もちろん、ベンチでのテストや、シミュレーターに多くの時間を費やしてきました。現在はテストコースに出て実車でテストを行っています。
マシンには非常に高い信頼性があり、手応えを感じています。初期段階において極めて重要な「マイレージ」をしっかり稼ぐことができていますし、マシンが壊れないおかげで、現在はシャシーセットアップやソフトウェア設定の熟成・改善に注力できています。深刻な問題はどこにも出ておらず、非常に順調なプロセスを踏めていると感じています。
Q. 開発ドライバーとしてソフィア・フローシュ選手を起用しましたね。この決断の裏にはどのような経緯があったのでしょうか?

ソフィアは非常に興味深いバックグラウンドを持ったドライバーです。現在、テスト・開発ドライバーとして非常に素晴らしい仕事をしてくれています。
さらに、近くフォーミュラE内で女性ドライバーに特化したプログラムが正式発表される予定となっています。
シミュレーターに乗ってもらう機会も多く、Gen2マシンを使ってトラック上でテスト走行も行っています。エンジニアリングチームとも非常によく連携しており、本当に良い仕事をしてくれています。
最終的に彼女がどう成長していくか楽しみです。これは決して単なるマーケティング目的の話題作りではありません。モータースポーツの世界は非常にシンプルで、ラップタイムがすべてを証明します。今後どう進化していくか見守っていきますが、彼女が良い仕事をしてくれると確信しています。
「明確な目標とともに」来季体制も間もなく発表へ

Q. レギュラードライバーのラインナップはどうなるのでしょうか。ベテランか、ルーキーか、フォーミュラEには多くの選択肢がありますね。
私たちは当初から明確な目標を持ってドライバーを探していました。
ひとりは非常に経験豊富で速く、フォーミュラEのすべてを知り尽くしているドライバー。そしてもう一方は、若い本物の才能です。
ただし、若きタレントとは、F1の扉を叩いた高いレベルの若者を指しています。F4、F3、F2といったF1やフォーミュラEに至るカテゴリーで、タイトルを獲得したり完全にシリーズを支配してきたようなレベルのドライバーのことです。
あと数週間、具体的には8月末までの4週間以内に分かりますので、楽しみにしていてください。私たちのドライバーラインナップには非常に自信を持っています。スピード、経験、そして新鮮な才能が完璧にミックスされた陣営になるはずです。
Q. 世界最高峰の舞台に新規チームとして参戦するのに最も重要な点はどこにあるのでしょうか。
多くの課題がありますが、結局は「マネジメント」に集約されます。正しい情熱を持ち、一つの目標に向かって突き進むことができる適切な人材を揃えることです。
まず何よりも、フォーミュラE特有の技術に対応できる専門的なスキルを持った人材が必要です。これが第一歩であり、そこからチームとしての一体感を作り上げていく必要があります。私たちは一歩一歩着実に進めており、非常に良いプロセスを踏めています。12月には、その成果としてのチームをお見せできるはずです。
Q. 開幕を楽しみに待っているファンへメッセージをお願いします。
日本のファンの皆さんにお伝えしたいのは、皆さんの情熱が本当に素晴らしいということです。ドライバーを心から熱狂的に応援してくれている姿を見るのは、何よりも素晴らしい体験になるでしょうね。
オペルとしては、参戦初年度の開幕からしっかりと存在感を示していきます。もちろん「最初から簡単に勝てる」などと言うつもりはありませんが、黄色いマシンがグリッドの上位に食い込めるよう、全身全霊でハードワークを続けていきます。楽しみに待っていてください。
(文/写真一部・インタビュー=矢野 巧)







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