三亜復活・上海継続の”中国二連戦”から見るアフターコロナ経済

三亜復活・上海継続の”中国二連戦”から見るアフターコロナ経済

11月初旬、中華人民共和国外交部は日本を含む46か国のパスポート保有者に対し、最大30日間の入国ビザ免除制度を2026年末まで継続すると発表した。長期にわたるCOVID-19対策からの経済回復が遅れていた中国は、2020年から続いた「鎖国」政策を昨年大きく転換させ、現在、外国人観光客の誘致に注力している。

そうしたなか、10月中旬にフォーミュラEはシーズン12のカレンダーを正式に発表。
当初「TBC」となっていたひとつの週末が、中国南部に位置するリゾート島、海南省(ハイナン)の三亜市での開催に決定。すでに開催が発表されていた上海でのダブルヘッダーレースと合わせ、2026年には中国国内で2大会が開催されることになる。これは、フォーミュラEが中央政府が推し進めるEV政策と観光誘致政策が一致した国家事業と位置付けられていることが見て取れる。

海南:変貌を遂げる自由な島

中国の政治システムでは、地方政府が税収に基づき地方自治を担い、不動産開発に関連する観光地の最適化などの公共事業は融資平台(地方政府融资平台)と呼ばれる第三セクターを通じて投資する形をとる。
中央政府は利便性・快適性・清潔度などの観光地としての価値を定める「国家5A(AAAAA)級旅游景区」の認定・広報や、外国人観光客の利便性向上といった役割で観光誘致を主導する。復活開催が決まった三亜市を擁する海南省は2024年新規登録を含む7か所、上海は5か所の「旅游景区」が制定されているが、特に「中国のハワイ」と呼ばれる南の離島、海南島には近年、中央政府の関心が集中している。

そのひとつは、中央政府が海南での目玉政策として進める免税制度だ。
中国政府は2020年6月、「海南離島旅客免税政策(关于海南离岛旅客免税购物政策)」の改正を発表し、同年7月1日に施行した。
これは、海南の離島免税店や承認を受けたインターネットサイトでの購入時、従来の年間免税上限額3万元を10万元(約220万円・2025年現在)へと大幅に引き上げたものだ。この制度は「離島」である海南から中国本土へ出発する旅客に対し適用される。
改正では、免税対象品目が38品目から45品目に拡大され、特に化粧品、電子製品、酒類、携帯電話など高級製品が追加された。
パンデミック下におかれながらも、この新政策施行後の特定期間の販売額は19億7,700万元を記録し、国内の消費喚起に成功した。

その後、2025年にはビザ免除プログラムの再開を受け離島免税政策を改定。
国内需要に加え外国人観光客もターゲットに高級品の免税品目が追加。さらに年間10万元の使用枠が無制限に引き上げられた。
また、海南の住民であっても、いったん離島することで免税が適用される仕組みが導入された。
導入初日の11月1日から7日までの免税品目の売上高は5億600万元となり、前年同期比で34.86%上昇を記録している。

あらたな香港誕生へ:封関運営開始

海南への注力は単なる観光誘致に留まらず、中国経済の改革を担う「自由貿易港」の拡大へと向かっている。
中央政府は12月18日からの「封関運営(全島封関運作)」開始を発表している。
これは優遇関税政策を実施し、輸入品全体に占めるゼロ関税の対象品目の割合を従来の21%から74%へと大幅に引き上げ、自由貿易を促進し、民間企業の誘致を図るものだ。

これは、かつて深圳(深セン)を皮切りに、停滞していた中国経済を改善しようと、自由経済市場の導入を目的に始まった「経済特区」政策と共通する動きだ。
更地だった深圳が、すでに金融・貿易のハブとして発展を続けていた香港と接するというメリットを利用し税金緩和で企業を誘致し雇用を生み出した結果、中国南方を代表する大都市に急成長。
海南でも同様の変貌が期待されている。

「封関」制度を推し進め、海南を中国本土とは明確に異なる域外の貿易港とすることで、あらたな香港として完全な自由貿易体制を成立させることが狙いだ。
企業の輸入品に対する輸入関税・増殖関税・消費税をネガティブリストを除き免除するほか、海南の企業が輸入材料を用いて加工した製品を中国本土に移出する際は輸入関税が免除されることとなる。
さらに、外国籍労働者の給与や収入の送金を自由化し海南内での製造・加工業の発展を支援する。

この新たなゼロ関税政策により、海南島は中国本土に入る外国製品の主要な製造・加工ハブとして高い魅力を持つ。南シナ海に浮かび、ベトナムやフィリピンを望む海南は、「南の玄関口」として、発展し続けるASEAN諸国の広大な市場と結びつく貿易の中心地として重要視されているのだ。

JETROによると、海南自由貿易港の建設開始から5年間で、対内投資額は年間平均14.6%増、新設外資系企業数は年間平均43.7%増と大幅な伸びを記録。封関運営に向けた優遇策が、国内外の企業誘致に既におおきな効果を発揮していることを示している。

利便性向上:ビザ免除対象外でもビザ不要の入国を継続

中央政府は観光誘致とビジネス目的の移動の利便性を高めるため、ビザ免除対象外の国籍保有者に対しても指定された期間内で最大144時間(6日間)を対象に、事前のビザ申請の必要のないトランジットビザ免除制度を継続している。
さらに、首都北京、天津、河北省では、「一帯一路イニシアティブと京津冀協同発展計画をより着実に進め、より便利な出入境環境を構築」するためと銘打ち、滞在可能時間を最大240時間(10日間)にまで拡大した新制度を導入した。この長期滞在型新制度を広報するパンフレットでは北京市内の観光案内が目玉となっており、中央政府はトランジットという体裁を取りながらも、観光入国を強く推奨しているのだ。

この制度を利用すると、ロンドン→北京→東京といったルートで移動する場合、ビザ免除対象外の国籍保有者であっても、面倒なビザ申請なしに中国滞在が可能となる。

トランジットビザ免除制度は、2023年初夏から24年12月31日のビザ免除開始まで、日本国籍保有者も利用することができた。
外国人観光客の利便性を高め、経済活動を活発化させたいという中央政府の強い意志がうかがえる。

このように、来るシーズン12での中国2大会開催は、EV政策の推進だけでなく、新しい香港ともいえる海南の金融・貿易的ハブとしての魅力を国際社会にプロモーションする興行としての側面も持つ、大きな国家事業なのだ。

Sam Bagnall / LAT Images
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