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地政学リスクで加速するエネルギー転換とフォーミュラEの「Race to Road」。

イランを巡る地政学リスクの再燃は再生可能エネルギーの優位性を浮き彫りにしている。2月末から続く交戦の影響をうけ、世界のエネルギー産業は現在、化石燃料系と脱炭素系の二つのシステムが並立する「移行の中間期」を迎えている。  …

地政学リスクで加速するエネルギー転換とフォーミュラEの「Race to Road」。

 イランを巡る地政学リスクの再燃は再生可能エネルギーの優位性を浮き彫りにしている。2月末から続く交戦の影響をうけ、世界のエネルギー産業は現在、化石燃料系と脱炭素系の二つのシステムが並立する「移行の中間期」を迎えている。
 この過渡期においてはインフラの重複コストが発生し、経済的・政治的な摩擦を生みやすい時期だと、ノートルダム大学のエミリー・グルーバート教授が指摘する。
 一方で、それらはあくまで一時的コストであり、脱炭素投資の先行支出を正当化する。同時に、供給が需要より先に減少するというリスクに対し、長期調達契約の見直しをいかに迅速に完了させるかが、戦略的優位を分ける鍵となると分析されている。

 2025年の世界の脱炭素投資は過去最高の2.3兆ドル(BloombergNEFの推計)に達すると見込まれている中、エネルギー安全保障の危機を最もダイレクトに反映しているのは原油の70%をホルムズ海峡経由で輸入する韓国で、2026年3月の国内EV販売は前年比2倍超を記録。「化石燃料依存は深刻なリスク」という認識のもと、EVが石油依存を断ち切るための戦略として位置づけられている。

2022年に開催されたソウルE-Prix

 しかし同時に、EVシフトの加速は「廃棄電池」という新たな課題を生む。そんななか、加・ブリティッシュコロンビア州発のエネルギーソリューション企業Moment Energyは、安全認証を取得し廃棄EV電池をエネルギー貯蔵システム(ESS)へと転換する事業の規模を拡大。
 また、英・ケンブリッジのエネルギー貯蔵技術企業Nyoboltは5分以内に80%充電可能な次世代電池の開発で評価額10億ドルを達成しており、電池の循環と安全規格の標準化がエネルギー自立を支える不可欠なものであると評価されていることがわかる。

Simon Galloway/LAT Images

 こうした経済・政策の潮流が最前線で実践されている場所がフォーミュラEだ。
 レース中にピットで急速充電を行う「ピットブースト」は、オーストラリアのエネルギーソリューション企業であり、排出量削減に注力するFortescueとのパートナーシップにより、シーズン11(2024/2025)から導入された。2年目となる今シーズンはダブルヘッダーのすべてのレース週末と一部のレースにおいて使用されている。

 Fortescueが供給する600kWという超高出力充電は、Gen3 evoのバッテリーの約10%をわずか30秒のあいだに充電する。この豪州企業が掲げる2030年までの自社実質排出ゼロという目標に向けた鉱山用巨大電動トラックの技術は、世界最高峰のEVレースの世界で培った技術をもとに開発されており、フォーミュラEが追求してきた「Race to Road」の好事例でもある。

 イラン危機が示した化石燃料エネルギーの脆弱性に対応する世界の取り組みはすでにフォーミュラEのピットレーンで実践されており、社会が石油依存から脱却するための実験室として、その価値をかつてないほど高めている。

(文・矢野 巧)

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