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最高峰の華やかさと最速マシンへの挑戦。フォーミュラEは「転換点」を迎えている。

今季で12年目を迎えるABB FIA フォーミュラE世界選手権。来季導入予定の最高速度330km/hを超える次世代マシン「Gen4」の発表を経て、この世界選手権は新たなフェーズへと移行している。しかし、変化の波は競技面 …

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最高峰の華やかさと最速マシンへの挑戦。フォーミュラEは「転換点」を迎えている。

 今季で12年目を迎えるABB FIA フォーミュラE世界選手権。来季導入予定の最高速度330km/hを超える次世代マシン「Gen4」の発表を経て、この世界選手権は新たなフェーズへと移行している。しかし、変化の波は競技面だけではない。興行、そして開催地のあり方という面でも、フォーミュラEはこれまでにない一面を見せ始めている。


豪華ゲストが埋め尽くした「史上最高」のグリッド。

 3月に開催された第6戦マドリッドE-Prixは、シーズン12における最初のヨーロッパラウンドとなった。そのグリッドは、文字通り「歩けないほど」のゲストや関係者で埋め尽くされ、関係者の間からは「フォーミュラE史上最高のグリッドウォーク」と称賛する声も上がった。

グリッドを歩くサインツ。
公式ブロードキャストのインタビューを受けるバリチェロ。
ローラ・ヤマハ・ABTからルーキーテストに参加する友人を訪れたモントーヤ。

 母国の英雄であり、世界ラリー選手権やダカール・ラリーで輝かしい経歴を持つ”エル・マタドール”、カルロス・サインツをはじめ、元F1ドライバーのルーベンス・バリチェロが息子のフェルナンドを伴って訪問。同じく元F1のファン・パブロ・モントーヤと息子のセバスチャンの姿も見られるなど、レジェンドや現役ドライバーらが一堂に会した。

ダ・コスタをたたえるフェリペ6世。
Photo: Malcolm Griffiths/LAT Images

 さらにこの日、表彰台プレゼンターを務めたのはスペイン国王フェリペ6世。レースで優勝し、表彰台の頂点に立ったアントニオ・フィリックス・ダ・コスタに直々にメダルを授与するなど、格式の高さも際立つ一戦となった。

 この盛況ぶりに、フォーミュラE CEOのジェフ・ドッズ氏は「最高です」と話す。今後もこのような”史上最高のグリッド”を再現できるかと問うと、「もちろんそう願います。(各開催地には)それぞれのセレブリティやインフルエンサーがいますから、今後もグリッドは非常に混み合うでしょうね。マドリッドで得られたような素晴らしい経験を、ベルリンやモナコ、そして東京でも得られることを願っています。」と期待を寄せた。

 その言葉通り、5月に開催されたモナコE-Prixでもカルロス・サインツを筆頭に多くの現役F1ドライバーやステークホルダーがパドックやグリッドを訪れた。

ダ・コスタと肩を組むサインツ。
Photo: Simon Galloway/LAT Images
ドッズCEOと言葉を交わすオリバー・ベアマン。
Photo: Kevin Tuyen
クルサードがドライブするGen4マシン。
Photo: Joe Portlock/LAT Images

 彼らゲストの視線の先にあったのは、すでにアンベールされていた次世代マシン「Gen4」。この日デモランを担当したデビッド・クルサードは、史上最速マシンの圧倒的な加速力に、思わず「Oh my god」と言葉を漏らした。

開催地の変化で生まれた「課題」。

 一方で、マドリッドで起きた変化はVIPの顔ぶれだけではない。これまで市街地サーキットでのレースをDNAとしてきたフォーミュラEが、スペイン首都でのレースの舞台に選んだのは常設サーキットであるハラマ・サーキットだった。

ハラマサーキットの最寄りバス停。筆者はメディア用バスが運行された決勝日を除く3日間利用した。

 ここでひとつの課題となったのは観客や我々メディアの「足」である。筆者の取材時、マドリッド市内から地下鉄とバスを乗り継ぎ、片道約1時間を移動に費やすこととなった。特にルーキーテストが実施された日曜は、始発が遅く最終が早いスケジュールで、かなりの苦労を強いられた。
 予選と決勝が行われた土曜日に関しては、マドリッド市内からメディア用シャトルバスが運行されたものの、運用面には課題が残った。渋滞回避を理由にレンタカー等を持つメディアに対しても一律でシャトルバスの利用が推奨されたため、一部の取材陣にとってはかえって二度手間となる非効率な運用を強いられる形となった。

 有名観光地から地下鉄1本でアクセスでき、駅のエレベーターを降りれば目の前がメディアセンター入口というベルリンや、常設サーキットながら地下鉄駅が隣接している上海と比べると、ハラマのアクセスが不便であったことは否めない。
 このアクセスの不便さをドッズCEOにぶつけると、「(車では)約20分ですが、市街地からは離れていますし良い課題ですね」と認めた。

 一方でドッズ氏は、今季のカレンダーにおいて市街地から遠く離れた会場は極めて例外的であることを付け加え、フォーミュラEが本来持つ強みを強調した。
「私たちのレースのほとんどは、公共交通機関で簡単にアクセスできます。たとえば東京では、ビッグサイトまでゆりかもめやりんかい線がありますし、ベルリンのテンペルホーフも市街地の中心部に非常に近いです。ただ、パーマネントサーキットでの開催に関しては、今後アクセスをしっかりと検討する必要がありますね」

「FEはミックスを求める」逆転するふたつの世界選手権。

 今年、F1世界選手権もマドリッドでのレースを予定しているが、その舞台はなんとマドリッド市街地。本来、パーマネントトラックで巨大な機材を広げ大掛かりなサーカスを展開するF1が市街地を選び、電動自動車の騒音の低さを生かし、公共交通でのアクセスも容易な都市部でのクリーンなイベントを得意とするフォーミュラEが常設サーキットを選ぶという、正反対の現象が起きている。

 ドッズ氏はこの新たな局面を「私たちは市街地とパーマネントの混合を求めているからです」と説明する。

東京E-Prix記者会見に登壇したドッズCEO

 この背景にあるのは、来季導入される「Gen4」の進化だ。330km/hを超える圧倒的なスピードを手にする次世代マシンは、従来の狭い市街地コースだけではそのポテンシャルを解放しきれず、また安全性の確保が難しくなると見られており、常設サーキットでの開催比率が増えると見込まれている。

 同氏は「両方のミックス」を求める理由をこう話す。
「Gen4は非常に速いため、市街地だけでレースすれば(マシンに対し)コースが狭く、短すぎることになります。スリルや興奮をもたらすには最適ですが、マシンの本来の最高速度を引き出すためには、いくつかの常設コースも必要なのです」
「もし常設サーキットで行う場合は、主要な都市の中心部に近い場所を好みます。上海は上海市街のすぐ外にありますし、ハラマもマドリッドには近い場所です。」



 興行面での華やかさと、マシンの高速化に伴う競技面。12年目を迎えたフォーミュラEは今、最速のマシンと最高のゲストを輝かせるための「最適な舞台作り」という、新たな試練と可能性に向き合っている。

(文・写真一部=矢野 巧)

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