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EV産業中核のインドネシアで消えたジャカルタE-Prix。縮小するフォーミュラEの開催地。

今シーズン開幕前、カレンダー上に残されていた未定枠「TBC(To Be Confirmed)」のうち、ひとつは三亜E-Prixとして正式発表された。これにより、中国は上海E-Prixと合わせ2大会を開催する唯一の国とな …

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EV産業中核のインドネシアで消えたジャカルタE-Prix。縮小するフォーミュラEの開催地。

 今シーズン開幕前、カレンダー上に残されていた未定枠「TBC(To Be Confirmed)」のうち、ひとつは三亜E-Prixとして正式発表された。これにより、中国は上海E-Prixと合わせ2大会を開催する唯一の国となり、フォーミュラEに対する継続的なコミットメントを改めて示した。
 一方で、当初はジャカルタE-Prix開催が有力視されていたもうひとつの「TBC」は最終的に消滅。東南アジア唯一の開催候補だったインドネシアでの一戦は実現せず、フォーミュラEの地理的な広がりは縮小する結果となった。

 インドネシアでは2024年の大統領選でプラボウォ・スビアント政権が発足したが、財政運営や政治体制を巡る議論が続き、国内では政権への抗議活動も発生した。そうした政治・財政面を巡る緊張感が高まるなかで開催されたのが、2025年のジャカルタE-Prixだった。

 インドネシアはEV用電池の主要素材であるニッケルの世界最大の生産国でもある。年間生産量は約77万トンと、EVサプライチェーンにおける重要性は年々高まっている。2026年には価格維持を狙った生産抑制方針も打ち出されたが、依然として世界有数のニッケル輸出国として資源外交で大きな影響力を持つ。

Simon Galloway/LAT Images

 こうした資源国家としての存在感を背景に、EVレースの世界最高峰であるフォーミュラEは、インドネシアにとって電池産業やEVサプライチェーンにおける自国の重要性を世界へ発信する格好の舞台だった。
 実際、フォーミュラEのレギュレーションではニッケル含有率50〜69%のニッケル基合金の使用が認められており、アクスルやモーターの一部にも採用されている。世界最大のニッケル生産国であるインドネシアにとって、ジャカルタE-Prixは単なるレースイベントではなく、国家戦略産業をアピールするショーケースであった。

 中東情勢の悪化を背景に急速に進むEVシフトや、電池産業の成長という観点から見れば、インドネシアは依然としてフォーミュラEにとって重要な市場であることに変わりはない。しかし、シーズン12に向けてフォーミュラEとジャカルタ側は開催継続に向けた協議を進めたものの、大統領府とジャカルタ政府との対立が障壁となり契約締結には至らなかった。その後も双方は将来的な開催の可能性を否定していないが、Gen4マシンが導入されるシーズン13(2026/27)のカレンダーにジャカルタが含まれることはなさそうだ。

 ジャカルタE-Prixの消滅は、フォーミュラEが抱えるリスクも浮き彫りにした。現地政治や行政の変化によってレース継続が左右される状況が続くなか、シリーズには政治的な混乱に左右されにくい市場を開拓しながら、同時に地域的多様性を維持するという難題が突き付けられている。
 中国での2大会開催が実現する一方で、東南アジア唯一の開催地が姿を消したことはその象徴ともいえるだろう。
 かつて開催された南アフリカ、モロッコ、チリ、ウルグアイといった、フォーミュラEならではの新興地域でのレースは現在、見る影もない。

 フォーミュラEがグローバルな選手権であり続けるためには、東南アジアへの再進出や、他の地域を含めた地域的な広がりを取り戻すことが求められる。


(文=矢野 巧)

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