
2026年4月20日、ポルシェはFormula E GEN4マシン【PORSCHE 975 RSE】を発表した。このマシンはフォーミュラE シーズン13からポルシェ・フォーミュラEチーム及びポルシェのセカンドチームで使用される見込み。
本記事では、ポルシェのリリースをもとに新型GEN4マシンの全貌を紐解いていく。

ポルシェ・モータースポーツの副社長であるトーマス・ローデンバッハ氏は、「GEN4は電気自動車がいかに進歩を遂げたかを象徴しています」と述べた。「2014年の選手権創設当時、ドライバーは1レースにつき2台のマシンを必要としていました 。バッテリー1つではレース全距離を走り切ることができなかったからです。そのような時代は今や過去のものとなりました。私たちは2024年以降、F2マシンに匹敵するレベルのレースカーを開発してきました。EVは既存の基準に追いつくだけでなく、サーキットでも公道においても、その優位性をますます明確に示しつつあります」

パフォーマンスを支えるダウンフォースの強化
フォーミュラEの歴史において、GEN4マシンは初めて空気力学的なダウンフォースがマシンのグリップ力向上に大きく貢献することになる。ブリジストンと新型タイヤと常時全輪駆動の組み合わせにより、これまで以上に高いコーナリングスピードが実現される。
ポルシェ・モータースポーツのフォーミュラEテクニカル・プロジェクト・リーダー、オリビエ・シャンペノワは次のように述べた。「約10年の間に、フォーミュラEはダウンフォースを必要とするほどの速さに到達しました。しかし、ダウンフォースは常にドラッグ(空気抵抗)を伴い、エネルギー消費を増大させる要因にもなります。高い効率性を維持するため、私たちは異なるボディワーク・コンポーネントを備えた2種類のエアロパッケージを用意しました。レース用にはドラッグを抑えた『低ダウンフォース・パッケージ』、エネルギー消費が重視されない予選用には『高ダウンフォース・パッケージ』を使用します。ダウンフォースの増加量は、GEN3 Evoと比較して最大150%にも達します」。

加えて、シャンペノワ氏はフォーミュラEのエネルギー損失パーセンテージについても言及。
現行のフォーミュラEマシンであるGEN3 Evoマシンの「ポルシェ 99X Electric」において、ドライブトレインの効率はすでに97%を優に超えていると。バッテリーからホイールに至るまでのエネルギー損失(機械的摩擦などによるもの)は、3%未満に抑えられています 。(参考までに、一般的なエンジン車のドライブトレイン効率は約30%)
「効率が完璧に近い領域に達したことで、GEN4の開発においては、市販のEV開発と同様に重量、耐久性、コストといった項目がより重視されるようになりました。975 RSEは先代モデルからピークパワーが71%向上しましたが、同時に多くの部品で軽量化を達成しました。GEN4ではGEN3よりも自社開発コンポーネントが増えているにもかかわらず、パーツパッケージ全体の重量増はわずか5kg以内に抑えられています」。

フォーミュラEにおいて、メーカーは主に市販の電動車にも関連する技術コンポーネントの開発を主導する。ポルシェによる自社開発範囲には、制御ソフトウェア、パルスインバーター、電気モーター、ギヤボックス、ディファレンシャル、ドライブシャフト、その他のリアアクスル周辺の駆動部品のほか、リアの冷却システム、キャリア、サスペンションが含まれる。GEN4の導入に伴い、DC/DCコンバーター、ブレーキ・バイ・ワイヤ・システム、追加の電子機器やワイヤーハーネス、油圧ディファレンシャル用の制御ユニットなども開発対象に加わった。

コンセプトはそのままに、より高速なレースを
ファクトリー・モータースポーツ・フォーミュラEディレクターのフローリアン・モドリンガーは、「コンセプトは一貫しています。市販車への技術転用という意義を持たせるため、レギュレーションによってあらゆる面でマシンの効率を最大化することが求められています」と述べた。「マシンの速度が大幅に向上することで、レースはさらに魅力的なものになるでしょう。加速性能は圧倒的で、最高速度は335km/hに達すると予想しています。ファンの皆さんがどのような反応を見せてくれるか、非常に楽しみです」

ポルシェ 975 RSEは、直近3シーズンで4つの世界選手権タイトルを獲得した現行GEN3マシン、99X Electricの座を引き継ぐ。新しい975 RSEは12月に実戦デビューを飾る予定で、そのモデル名は、ポルシェ・モータースポーツが2026年に創立75周年を迎えることに由来しており、今後の成功の歴史が電動レーシングによって形作られていくことを象徴していると言う。
現在、ポルシェ・モータースポーツは2026年10月に予定しているとされるGEN4マシンのホモロゲーション期限まで、フォーミュラE向けとしては過去最大規模となるハードウェア・パッケージの開発に全力を注いでると話す。その後、開発の焦点はソフトウェアの最適化へと移行する。秋にFIA(国際自動車連盟)が仕様をホモロゲートする前に、ポルシェのカスタマーチームも新型マシンのテストを実施する予定。975 RSEは2025年11月にシェイクダウンを行い、4月初旬までに1,860kmのテストマイレージを蓄積。ポルシェは、現フォーミュラEマニュファクチャラーズチャンピオンとして、この新型車両を発表した。

新型車両へのコメント
ポルシェ・ファクトリー・ドライバーのパスカル・ウェーレインは
「新型ポルシェ 975 RSEは、最高にクールなレースカーです。GEN4は驚くほど速く、ドライバーにとって運転するのが非常に楽しいマシンです。多くのファンや批評家にとっても、驚きの存在になるでしょう 。外観も気に入っています。エアロダイナミクスを追求したデザインは妥協がなく、テスト用のカラーリングもとても決まっています」と述べた。

同じくファクトリー・ドライバーのニコ・ミュラーは
「975 RSEとそのライバルたちは、このスポーツにとって大きな一歩となります。これほどアグレッシブに攻めることができる点が気に入っています 。特に予選で全員が限界に挑む際、コーナー立ち上がりの強烈な加速は壮観なものになるはずです。開発初期からシミュレーター作業に携わることができて光栄です。パスカルと私でテスト任務を分担していますが、それによって975 RSEを自分たちのニーズに合わせて正確にセットアップできるのが大きな利点です」と語った。
暫定テクニカルデータ – ポルシェ 975 RSE
最高出力
・ノーマルモード:450kW(612馬力)
・アタックモード:600kW(816馬力)
駆動方式
・フルタイム4WD
加速性能
・0-100km/h:約1.8秒
エネルギー改正能力
・回生出力(ブレーキエネルギー回収):最大
700kW
・レース中に使う約40~50%のエネルギーを回生ブレーキによって補う
ブレーキシステム
・回生ブレーキ:フロント・リアアクスル合計で最大350 kWの電気ブレーキ能力
・ブレーキ圧に応じ、ブレーキ・バイ・ワイヤ方式の摩擦ブレーキによる追加制動が発生
・ブレーキディスク外形(前後共通):275mm
タイヤ
・ブリヂストン製タイヤ(ドライ・ウェット兼用):1レース週末、1台につき2セット(ダブルヘッダー時は3セット)を支給
・ブリヂストン製ウェットタイヤ(大雨用):1レース週末、1台につき1セット(ダブルヘッダー時は2セットの可能性あり)を支給
エネルギー貯蔵システム(RESS:リチャージブルエナジーストレージシステム)
・リチウムイオン蓄電池
・標準供給コンポーネント
・使用可能エネルギー容量:51.25kWh
CCS:コンバインド・チャージング・システム
・最大600kWの超急速充電に対応
重量及び寸法
・重量:954kg(ドライバー除く)
・全長:最大 5540 mm、全幅:最大 1800 mm、全高:最大 1150 mm
・ホイールベース:3080 mm
・トレッド:フロント 1482 mm / リア 1443 mm
エアロダイナミクス
・ダウンフォースとドラッグを最適化する2種類のエアロパッケージを採用
主な自社開発領域
DC/DCコンバーター、パルスインバーター、モーター、ギヤボックス、電子機器およびワイヤーハーネス、コントロールユニットを含む前後ディファレンシャル、ドライブシャフトおよびリア駆動部品、リアの冷却・キャリア・サスペンション部品、ブレーキ・バイ・ワイヤ・システム、制御ソフトウェア
主な共通コンポーネント
シャシー、ボディワーク、ホイール、タイヤ、ドライブトレイン、フロントの冷却・サスペンション部品、バッテリー

GEN4合同テストは明日から!
フォーミュラEはGEN4マシン初めての大規模合同テストを、フランスのポール・リカールにて4月21日(火)と22日(水)に行う。今回のポルシェや4月16日のジャガーの発表は、それに先立って行われた形。マヒンドラやローラ・ヤマハ・ABTなど、一部のチームは参加を見送るとの報道もあるが、現時点で詳細は不明。
次戦は5月2-3日に行われるベルリンE-Prix。日本はゴールデンウィーク真っ只中、伝統のテンペルホーフ・サーキットをGEN3マシンが走る最後のレースだ。


(文:河合優利)





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