
今シーズンのフォーミュラEにおいて、開幕前にもっとも大きな期待を背負っていたチームといえばマヒンドラ・レーシングだ。
ニック・デ・フリースとエドアルド・モルタラという、シーズン7(2020/2021)でわずか7ポイント差のタイトル争いを演じたふたりを擁し、グリッド上最強のペアのひとつとも評価されるこのチームは、スペイン・バレンシアでのプレシーズンテストで総合最速タイムを記録。チーム代表フレデリック・バートランドが「目標はランキング4位の維持」と慎重な姿勢を見せる一方で、パドックでは優勝候補筆頭と目されていた。
しかし第6戦を終えた今、チームには対照的な結果が突きつけられている。
モルタラは、開幕戦こそチームメイトであるデ・フリースとの接触の影響でDNF(リタイア)で終えたものの、その後はメキシコシティで表彰台、ジェッダでは2連続ポールを獲得し、第6戦を終えた段階でチャンピオンシップ2位につけている。
首位を走るパスカル・ウェーレイン(ポルシェ)との差はわずか9ポイント。バレンシアで見せた「速さ」が本物であることを、証明している。
一方、シーズン7チャンピオンのデ・フリースは、第6戦終了時点で獲得ポイントはわずか12。ランキングは14位に沈み、好調なモルタラとは60ポイントもの大差がついた。
開幕戦はモルタラとの接触が影響し2ポイントの獲得にとどまる。メキシコシティではモルタラが表彰台に上がる傍らトラブル起因のリタイアに終わり、早くも対照的な結果に。マイアミでは今季最高得点となる10ポイントを獲得したが、ジェッダの金曜日はグリッドから動けずにDNS(スタートできず)、続く土曜日はスペアパーツ不足によるコンポーネント交換で60グリッド降格および10秒ストップアンドゴーを科され、最下位で終えた。
| Rd.1 | Rd.2 | Rd.3 | Rd.4 | Rd.5 | Rd.6 | Points | Standing | |
| Edoardo MORTARA | DNF | 18 | 8 | 18+3 | 12+3 | 10 | 72 | P2 |
| Nyck DE VRIES | 2 | DNF | 10 | DNS | 0 | 0 | 12 | P14 |
プレシーズンテストで圧倒的なパフォーマンスを見せたマヒンドラの現状と課題について、ふたりのドライバー、そして関係者に迫った。
「最善を尽くすのが重要」エドアルド・モルタラ

Q.キャリアの中でも最も良いスタートを切り、ランキング2位につけていますが、この安定感の鍵は何でしょう?
過度なリスクを冒すことのない「知的なレース」運びができ、安定した仕事ができていると感じています。そして、予選で良いパフォーマンスを発揮できていることも大事ですね。コンスタントにしっかりとポイントを稼ぐには、前方グリッドからのスタートが確実に役立ちます。
Q.今シーズンはまだ未勝利ですが、みんな優勝に期待しています。自信のほどは?
大切にしているのは、手元にあるリソースで自分にできる最善を尽くすことで、必ずしも勝つことだけに固執しているわけではありません。勝てるチャンスが訪れたときはもちろん攻めていくつもりですが、現時点では着実にポイントを稼ぎ続けることにフォーカスしています。
Q.プレシーズンテストでも非常に速かったけれど、その際に今のランキング2位という結果を想像できましたか?
6戦を終えた段階でランキングの話をすることは、それほど重要ではありません。そういうものは15戦終わった後にすべきです。まだ全体の3分の1程度に過ぎませんから、また後で聞いてほしいですね。重要なのは、毎レース週末に、自分が持っているものから最大限の結果を引き出すよう努めることです。今のところはそれがうまくいっていますが、まだあと11戦も残っていますから…。

「トラブルを出し切ったと願う」ニック・デ・フリース

Q.今季はDNFやDNSが続き、さらに60グリッド降格ペナルティも受け、これまで12ポイント獲得に留まっています。現状、トラブルに苦しんでいるのでしょうか?
レースではこういうことは起こり得ます。技術的トラブルに遭遇することも…。もちろん理想的な形ではありませんが、今シーズンのトラブルは出し切ったと思いたいです。
ここからは一からスタートしなおし、前進していければと考えています。僕たちの車に少しトラブルが多かったのは事実ですが、今は目の前のことに集中するだけです。
Q.チームメイトのエド(アルド・モルタラ)は現在チャンピオンシップで2位につけています。彼のパフォーマンスと比べ、何か違いを感じていますか?
エドの結果はチーム全体にとって非常に励みになることですし、力強いスタートを切れたのはチームとしてうれしい結果です。
僕は、これまでの5戦のうち3戦でスタートすらできなかったり、完走できなかったりという状況で、まともに走れたのは2レースだけ…。そこで少しばかりのポイントを稼いだに過ぎません。ですが、ガレージの少なくとも一台がこれだけ良いポイントを積み重ねられていることは、チームにとってもエドにとっても本当に喜ばしいことだと思っています。

デ・フリースは第6戦マドリッドE-Prixの予選で2位を獲得。しかしレースでは2周目にアントニオ・フィリックス・ダ・コスタ(ジャガー)に乗り上げフロントウィングとミラーを損傷。自身のミスにより結果として無得点に終わったものの、ようやく技術トラブルに邪魔されることなく速さを見せた。レース後には笑顔を見せながら筆者に話しかけてくると、次戦への期待を明らかにした。
「不運な偶然」チームの見解
マヒンドラ関係者によると、チームはデ・フリースの21号車に頻発したトラブルについて、マシンの個体差によるものではなく、「不運な偶然」であると認識している。
また、マヒンドラは来シーズンから導入される次世代マシン「Gen4」の参戦を決めたものの、その開発状況はライバルメーカーと比較して大きく出遅れているという。それだけに、今季の好結果、そしてチャンピオンを狙いたいことには間違いないようだ。
「速さ」への信頼は高いマヒンドラ。両者のマシンに根本的な差がなく、今後トラブルが収束すれば「グリッド最強のペア」として、今後ポルシェやジャガーを脅かす存在になるだろう。
(文・写真=矢野 巧)







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